ロック・ラモーラの優雅なたくらみ / スコット・リンチ著 原島文世訳


ロック・ラモーラの優雅なたくらみ

ロック・ラモーラの優雅なたくらみ


 コレは素晴らしい作品。ロックの手際に、時間を忘れてしまった。

 舞台はヴェネチアのような水路の入り組んだ都市。表は貴族が優雅を極め、裏では悪党たちが潜めるそんなトコ。

 ロックたち悪党紳士団の繰り広げる大胆不適なコン・ゲームの内容と、話の合間に出てくるロックの過去話が上手い具合にロックや紳士団の面々の人物像、過去が気になり愛着も沸いてきてページをめくってしまう。
 この話を詠んでいて「オーシャンズ12」を思い浮かんだ。11の方ではなく、12の方だ。物語の序盤から見え隠れしている灰色王の存在がまさに怪盗ナイト・フォックスに近い役割を演じている。ロックに関しては存在感や行動力はまさにダニーの役割というかそのものである。また、場面や現在と過去の話の切り替えも、12での輸送場面での手法に似ている。

 後半からは、大胆で華麗なコン・ゲームから一転して、ロックだけでなく裏の世界全体が熾烈を極めることになる・・・・この急速な展開に冷静な書き口からスピード感と緊張感が感じられた。
 まちがいなくイイ作品だ。

 これが、著書のデビュー作だというのが驚き。しかもこのシリーズは7巻まで続くというのが更に驚く。今夏には英米で2巻が発売される模様で翻訳版が出るのが待ち遠しい。